20230901

日記197

この囲いで十分

2023/08/31 昨日
『V.』を読んで受けた印象とその気分そのままに若干の進捗がある。こんなふうに『V.』を読めたことでもう用は足りているようなものだ。しかし、自分の小説を書こうというときに一番やってはいけないことをやっている。そもそもやぶれかぶれな気分で手に取ったのだったが、自分と比較してこれを読むとまた、想像を絶して面白い小説だということがこれ以上ないほどはっきりする。鞭で打つという行為について、自分のやることだと感じさせるためにモンダウゲンと並走させる記述方式に、文体というだけでは説明のつかない技術を感じる。拒絶の反応を示す頃にはもう手遅れという外堀の埋め方は見事なほどに意地悪で、素直で率直という立ち合いでは引き起こせないものだ。
スタバを出てバスケの試合がどうなったかチェックすると第3Qが終わった直後だった。10分では帰宅するのにもぎりぎりになるから諦めようと思ったのだが、酒を買って飲みながらよく考えたら最終Qにはタイムアウトが多用されるから十分間に合うということに気づいた。急ぎ足で帰宅しテレビをつけるとちょうど逆転の場面。逆転が起こるときの勢いはすごくて、逆転したと思ったら一気に点差が開く。拮抗した展開のなかで逆転が起こるというのはあまりないことなのだろうから、バスケの逆転のかたちはこういうものなのだと思った。
酒を飲んでの散歩も中途半端に切り上げたし、試合を見た時間も3分ほどだったから消化不良にもなったので、荷物をおいてもう一度駅前まで散歩をしに行く。帰り道に千切りキャベツと納豆と生ハムを買って、酒を飲んでねむる。グッドスリープデイでねむけパワーが2倍。

2023/09/01 今日
あっという間に夏が終わって秋がきた。といっても暦の上ではとの但し書きがいる。日中の部屋のクーラーの出す音は苦しそうでちょっと気の毒になるぐらいだ。ザ行なしでスタバにくる。クッキーアンドクリームドーナッツを食べて『V.』を読み、日記を書く。
部屋は少しずつ進化する。モンステラ(観葉植物)の成長に合わせて、部屋そのものも大きく、植物が大きくなるスピードと同じようにさりげなくいつの間にか成長する。日々の生活に追われているために、家族の訃報に接しても、葬儀のために出かけることもできない。仕組みの一部分にいつの間にか組み込まれて、おかしいと思いながらも成長する部屋を守れなければならない。そのうちに友人たちが遊びに来ると、成長した部屋を口々に褒められる。自分は何もしておらず、部屋が勝手に成長しただけだとモンステラが部屋一面を熱帯林のように変えてしまった景色をホストとしてお客たちに紹介する。トピックはそれに尽きている。ゲストの中には家族の顔もあって、なるほどあれは夢だったのか、それとも死別したと思ったのは気のせいかと、半ば安心して目を覚ました。起きてしばらくのあいだ、夢だったのか夢ではなかったのか、喜べばいいのか悲しんだほうがいいのか、不安になった方がいいのか安心していいのかがわからなかった。しかし、そんななか、朝の憂鬱で低調な気分が不安を和らげてくれた。目が覚めていくにつれて、ゆっくり、あれは夢でこれが現実だと考えるようになった。部屋の細部についてはそのときに忘れた。

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