昨日
深夜というには早い時間、強雨というにはまばらな雨滴のなか、30分ほどウォーキングをする。昔から雨に濡れるのがちっとも苦にならない、どころかこういう雨の中のウォーキングには、一度びしょ濡れることを肯んじれば、テーマパーク相当の楽しみがある。
音楽的にもかなりの良さがあるし、雨粒が高いところからわざわざ私のところまで当たりにきてくれるのは嬉しいし、そのうえ、次から次へと当たりにきてくれて返礼をする暇も与えないよいうのも有り難い。恩に着せようという姿勢が微塵も見られないのが立派なお大尽だと思う。
帰宅して温かいご飯を食べる。肉巻きミョウガがお互いを引き立てあって、ポン酢で食べるのがたまらなく美味だった。
映像の世紀バタフライエフェクトを見る。「マクナマラの誤謬」の回。やっぱり映像で見るというのもあっていろいろ衝撃だったが、最後ベトナムを訪れて当時の敵司令官と握手を交わす映像がかなりの衝撃だった。そこで「なぜあれだけの局面にまで追い込まれて戦争を止めなかったのか」という質問をして、「国を愛していたからだ」という相手の回答に納得しなかったのが印象的で、たしかにそれでは納得がいかないだろうなと思った。ベトナム人はベトナム戦争をしぶとく戦ったが、同じような状況に置かれればどこの国の人間でもそうなると思うと恐ろしいものがある。最初は殺されるのが嫌で戦いたくなかったが、大切な人が殺されて敵が憎くなり死んでもいいから戦うという気持ちになったというのは、わかりやすく戦争状態の悲惨さを表していると思う。死んでもいいからというのは間違っていてもいいからというのを含むというか、正誤をこえている態度だから、かなりの程度どうやっても正せない姿勢にはまり込んでいるといえる。「子どもの命がどうなってもいいのか」とか「子どものために戦うのをやめろ」というのはそんな中でもかろうじて言える説得の言葉だが、子どもを殺された親がいるということを考えると、少なくともその人への説得はもう不可能だと思われる。実際、市街地を巻き込んだ戦闘では子どもの犠牲者も出ただろう。映像には、おそらく自分の子どもの死体を抱えて道を歩く女性の姿が映っていた。
あの局面でベトナムは戦争をやめるべきだったとするマクナマラの意見は正しいと思う。戦争をやめさえすればその時点から直接の犠牲者は出なくなるという意味で。しかし実際には戦争をやめなかったわけで、なぜやめなかったのか、その理由について考えないといけない。これはマクナマラひとりでは解決できない問いではあるから相手に質問をするのは必要になるだろうが、マクナマラは質問する相手を間違っていた。どれだけ冷徹に事を運ぶ人間であってもそんな質問をかけるに忍びない相手というのが現実にいて、しかしその人に対して「なぜ戦争をやめなかったのか」と聞くべきだったのだ。
敵司令が間違った判断をしたから犠牲が増えたというのが、この質問をしたマクナマラの主張なのだろうが、それで収めようとするのは正しくない。それで収まるとは思っていず、ただ間違いについての適切な評価に用いることのできる材料をひとつでも提供したいという姿勢で、できることをやるという意図で質問をしたというのなら、正しさについて考えようとしていたということはいえると思う。自分が間違っていたと認めることが一個人としての当人には不可能なほど決定的に間違っていて正しくなかったとしても、正しさについて考えようとすることはできて、それが正しさとは無関係であるという事態が起こる。このことをマクナマラは示した。
これこそが正しいと信じて突き進み、盛大に間違えることのできる人間に対して、私はシンパシーを覚えるし、状況によっては敬意を抱きさえする。マクナマラにしても活躍する舞台が異なっていれば魅力的な人物として人々に記憶されたかもしれない。反対に、正しさについて考え、それに邁進しようという、それ自体はまっすぐな姿勢も、間違った場所を選んでしまえば現実に起きる悲惨な出来事の元凶になってしまう。間違った場所にあっても正しさについて考えようとすることは可能で、十分な効果を挙げられるよう努力奮闘することもできるからだ。どの時代にあっても、戦争の英雄というのは間違った場所にいる正しさとは無関係の存在だと私は思う。ただ思うのではなく、およそすべて私が思うときと同様、そう考えるのが正しいと思う。
今日
在宅仕事。晴れ間が出たので洗濯物を処理する。残業を30分に抑えてスタバに出かける。当初の予定とは離れ、誤謬やら正しさやらについて考えることになる。当初は小説を書くつもりだったのに頭がべつの方向へ向いてしまった。正しさとか間違いとかの次元を離れた、小説の世界に遊ばないといけなかったのに。せっかくそれが許されているのに、むざむざ時間と労力を消費して愚かだったと思う。どうしてもつい考えようとしてしまうから、そういうところにはまり込んでしまったとき一気に抜け出せるような何か合言葉(?)を用意しておく必要がある。