細かなガラス片はお掃除ロボットであるルンバによってあらかた吸い取られたが、吸い残したガラス粉は人間である私の手によってきれいにするよりなかった。コロコロを転がし、テープを剥がし、コロコロを転がし、テープを剥がしというのを都合三回繰り返し、ようやく鏡の破片はきれいさっぱり片付いた。
ルンバは今も元気に稼働してくれている。
その後、バックスに行って文章を書いたり、えんしろのカクヨム小説を読んだり、源氏物語を読んだりした。
えんしろのカクヨム小説は昨日発見し短編集のほうを今日読み終えた。円城塔に憧れて、こんなふうに書けたらなと夢想するようなショートショートぐらいの分量の小説が円城塔本人によって書かれてあって、血は争えないなと思った。まあ親戚とかではなく本人なんだけど。漱石が芥川の『鼻』を激賞したときの「こういうものを2,30並べてみなさい。世の中に比類のない作家になれます」というコメントを思い出した。師匠やってないどころかいち読者なんだけど。
えんしろのカクヨムでのショートショートはわかりやすく面白いと思う。今日、Xを見ていると(一年前のこの頃から想像もできないことだがtwitterは名称をXに変更した)、円城塔が円城塔賞を開設したと発表していた。1万字以内という制限があったので自分は応募できないが、レギュレーションが変わったら是非出してみたい。(レギュレーションが合わないことにすこしホッとした)
源氏物語は「花宴」の回。
冠に挿すよう桜を渡し、ぜひとも舞を、と幾度も頼むので、断ることができずに光君は立ち上がり、静かに袖を翻すところをひとさし、申し訳程度に舞ってみせる。それだけでも、だれも真似できないほどすばらしく見える。左大臣は日頃の不満も忘れて涙を流す。
舞い手の光源氏はまあさすがという場面なんだけど、なにげに左大臣の感受性が際立ってすごい。いつも誰かが袖を濡らしているから泣く事自体はそんなに珍しくないけど、日頃不満があるにもかかわらずちょっとの舞を見て涙を流すのは目立ってすごい。
日頃のストレスで不安定になっていただけかもしれないが。そのストレスのもとは源氏なんだろうから穿った見方をすればまあマッチポンプだ。